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ヒエロニムスの殉教 GCJap 130

ヒエロニムスは、自分が前に真理を拒否したことに心を責められながら、次のように続けた。「わたしが GCJap 130.5

青年時代から犯したすべての罪の中で、最もわたしの心を悩まし、激しく心を責めたのは、この重大な場所で、ウィクリフに対して、また、わが師、わが友である聖なる殉教者、ヨハン・フスに対してなされた不法きわまる宣告を承認したことである。しかり! わたしはそのことを心からざんげする。そしてわたしは、不名誉にも死を恐れて彼らの教義を否認したことを告白する。それゆえに、全能の神が、わたしの罪を赦し、特に最も憎むべきこの罪を赦してくださることを嘆願する」。彼は、裁判官たちを指し、断固として言った。「あなたがたは、ウィクリフやヨハン・フスを罪に定めたが、それは、彼らが教会の教義を混乱させたからではなくて、ただ彼らが聖職者たちの引き起こす醜聞―─彼らのぜいたく、彼らの高慢、そして司教や司祭たちのあらゆる罪悪―─を、非難攻撃したからである。彼らが断言したことは、論駁することのできないものであるが、わたしもまた彼らと同様に考え、彼らと同様に宣言する」 GCJap 131.1

彼の言葉はさえぎられた。司教たちは、激怒に震えて叫んだ。「これ以上の証拠を求める必要があろうか。今われわれは、われわれの目の前に、最も頑固な異端者を見ている!」 GCJap 131.2

この騒ぎにも動ぜず、ヒエロニムスは叫んだ。「なに! あなたがたは、わたしが死を恐れていると思っているのか? あなたがたはこの一年間、わたしを死よりも悲惨な恐ろしい牢獄に監禁した。そして、トルコ人やユダヤ人、あるいは異教徒よりも残酷にわたしを扱った。わたしの肉は、文字通り、わたしの骨から腐って落ちた。それでもわたしは、つぶやきはしない。悲しむことは、勇気ある人間にふさわしくないからだ。しかし、キリスト教徒に対して、かくも野蛮な行為が行われたことに、驚かざるを得ないのである」 GCJap 131.3

ふたたび、人々が怒って騒ぎ立てたので、ヒエロニムスは急いで牢獄に送りかえされた。しかし、そこに GCJap 131.4

集まっていた人々の中には、彼の言葉に深い感銘を受けて、彼の生命を救おうとした者もあった。彼は、教会の高い地位の人々の訪問を受け、会議に従うように勧告を受けた。ローマに反対することをやめるならば、その報賞として、輝かしい世的栄誉が約束された。しかしヒエロニムスは、世の栄光が提示された時の主イエスと同様に、揺るがず堅く立った。 GCJap 132.1

「わたしが間違っていることを聖書から証明してもらいたい。そうすれば、わたしは、取り消そう」と彼は言った。 GCJap 132.2

「聖書! なんでも聖書によって判断すべきであるというのか。教会が解釈しないで、いったいだれが理解することができようか?」と誘惑者の一人は叫んだ。 GCJap 132.3

ヒエロニムスは答えた。「われわれの救い主の福音よりも、人間の伝説のほうが信じる価値があるというのか。パウロは、彼が手紙を書き送った人々に人間の伝説に従うのではなくて、『聖書を調べ』よと勧めたのである」 GCJap 132.4

「異端だ! わたしはこれまで長い間あなたに嘆願してきたことを悔いる。あなたは悪魔に取りつかれているということがわかった」というのが答えであった。 GCJap 132.5

まもなく、彼に有罪の宣告が下った。彼は、フスが生命をささげたのと同じ場所に引かれていった。彼の顔は喜びと平安に輝き、彼は歌をうたいながら進んでいった。彼はキリストを見つめていた。彼にとって、死は恐ろしいものではなかった。刑の執行者が火をつけるために彼の後ろにまわった時、殉教者は叫んだ。「かまわず前に来て、わたしの目の前で火をつけなさい。それがこわいくらいなら、わたしはここに来てはいない」 GCJap 132.6

炎が彼を包んだ時、彼の最後の言葉は祈りであった。「主、全能の父よ。どうか、わたしを憐れんでください。わたしの罪を赦してください。あなたは、わたしが常にあなたの真理を愛したことを知っておられま GCJap 132.7

す」。彼の声はやんだ、しかし彼のくちびるは祈り続けて動いていた。全部が燃えつきた時、殉教者の灰は土と共に集められて、フスの時と同じようにライン川に投げ入れられた。 GCJap 133.1

こうして、神の忠実な証人たちは死んだ。しかし、彼らが宣言した真理の光―─彼らの雄々しい模範の光―─は、消し去ることができなかった。当時すでに世界に臨みつつあった夜明けの光を止めようとすることは、太陽を後戻りさせようとするのと同じことであった。 GCJap 133.2