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第7章—マルチン・ルターの登場 GCJap 139

幼年時代と彼の両親 GCJap 139

教会を、法王教の暗黒から、純粋な真理の光に導くために召された人々の中の第一人者は、マルチン・ルターであった。熱心で、献身的で、神のほか何も恐れることを知らず、聖書以外のどんな信仰の基準をも認めなかったので、ルターは、実に、その時代のための人物であった。神は彼を用いて、教会の改革と世界の啓蒙のために大きな働きを成し遂げられた。 GCJap 139.1

ルターは、福音の最初の使者たちと同様に、貧しい階級の出であった。彼は幼年時代を、ドイツの農民の質素な家庭で過ごした。彼の父は鉱夫で、毎日の労苦によって彼の学費をかせいでいた。父親は彼を弁護士にしようと思った。しかし神は、彼を、幾世紀にもわたって徐々にではあったが、建設されつつあった大神殿の建設者にしようとされた。困難、窮乏、厳しい訓練は、無限の知恵の神が、ルターにその生涯の重要な任務に対する備えをさせられたところの学校であった。 GCJap 139.2

ルターの父は、強固で活発な精神と、品性の偉大な力の持ち主であって、正直と決断と率直さを持った人であった。彼は、結果がどうなろうと、義務を忠実に果たす人であった。彼の確かな判断力は、修道院制度に対する不信感をいだかせた。ルターが彼の許可を得 GCJap 139.3

ないで修道院に入った時、彼は非常に腹を立てた。父と子の和解には二年かかったが、その時でも彼の意見は変わらなかった。 GCJap 140.1

ルターの両親は、子供たちの教育と訓練に非常に注意を払った。彼らは子供たちに、神を知ることと、キリスト者の美徳を実行することとを教えるように努めた。父親は、息子が主の御名を覚え、いつかは神の真理の発展を助けるようになることを祈ったが、ルターはこれをたびたび耳にした。両親は、その労苦の生活の中で与え得るあらゆる道徳的知的訓練の機会を、熱心に活用した。 GCJap 140.2

彼らは、子供たちが信心深く有用な生活を送るように準備させようと、熱心に忍耐強く努力した。彼らが厳格で強固な品性の持ち主であったために、時には厳しすぎることもあった。しかしルター自身、ある点においては彼らの誤りを認めながらも、彼らのしつけは非難するよりは賛成すべきものであると思った。 GCJap 140.3

ルターは、年少の時に送られた学校で、非常に厳しい、乱暴なまでの扱いを受けた。彼の両親は非常に貧しかったので、彼が別の町にある学校へ家から通った時には、一時、家々を歌をうたいながらまわることによって食を得なければならず、空腹に苦しんだこともしばしばであった。当時一般に行きわたっていた、陰うつで迷信的宗教観は、彼の心を恐怖で満たした。彼は、夜、悲哀におそわれて床につき、暗い将来を眺めておののいた。そして、神を、慈愛に満ちた天父としてではなく、厳格で容赦しない裁判官、残酷な暴君のように考えて、常に恐怖におびえていた。 GCJap 140.4

しかしルターは、多くの大きな失望の中にありながらも、彼の心を引きつけた道徳的知的卓越の高い標準に向かって、決然として進んでいった。彼は、知識を渇望していた。そして彼は、熱心で実際的な性質であったので、派手で表面的なものよりは、堅実で有用なものを望んだ。 GCJap 140.5