Go to full page →

メランヒトンの協力 GCJap 154

この取り決めは、ついに実現することになり、法王の使節が、取り調べのために任命された。法王からこの使節に伝えられた指示によれば、ルターはすでに異端者として宣告されていた。それゆえに使節は、「直ちに起訴して、身柄を拘束する」ように命じられていた。もしも彼が自分の説を固守して譲らず、また使節が彼を逮捕しそこねた時には、「ドイツ全国において、ルターから法律の保護を奪い、彼についた者をみな追放し、のろい、破門する」権限が彼に与えられていた。そればかりでなくて、法王は、この危険な異端を根絶するために、ルターと彼の支持者たちを捕らえてローマの裁判所に送ることを怠った者は、皇帝を別として、教会や国家のどんな高官であろうともすべての者を破門するように、使節に命じた。 GCJap 154.2

ここに法王教の真の精神があらわれている。この記録全体の中に、キリスト教の原則の痕跡どころか、一般の正義の痕跡さえ見られない。ルターは、ローマから遠く離れており、自分の立場を説明したり弁護したりする機会がなかった。にもかかわらず、彼は、その事件が調査される前に、即刻異端の宣告を受け、しか GCJap 154.3

もその同じ日に、戒告、告訴、裁判、判決を受けている。そしてこうしたことはすべて、教会あるいは国家において唯一で最高の無謬の権威を持つ聖なる父と自称する者によって行われたのである。 GCJap 155.1

ルターが真の友の同情と勧告を大いに必要としていたこの時に、神は摂理のもとに、メランヒトンをウィッテンベルクに送られた。メランヒトンは、年は若く、謙遜でひかえめな態度の人であったが、彼の公正な判断、該博な知識、人を引きつける雄弁は、彼の高潔で厳正な品性とともに、一般の賞賛と尊敬を受けた。彼は優れた才能に恵まれていたが、その温順な性質のほうが目立っていた。彼はまもなく、福音の熱心な使徒となり、ルターの最も信頼する友、貴重な支持者となった。彼の温順慎重で几帳面な活動は、ルターの勇敢で精力的な面をよく補った。彼らが協力したことは宗教改革に力をそえ、ルターにとって、大きな励ましの源であった。 GCJap 155.2