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患難から栄光へ

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    第41章 アグリッパ王大いに感銘す

    本章は使徒行伝25:13~27、26章に基づくAA 1520.3

    パウロがカイザルに上訴していたので、フェストは彼をローマに送るよりほかに仕方がなかった。しかし適当な船がみつからないままに、しばらくの時が過ぎた。また他の囚人たちもパウロといっしょに送られることになっていたので、それらの事件の審理のために遅延が生じた。そのためにパウロは、カイザリヤの主立った人たちとヘロデ王家の最後の王であるアグリッパ2世の前で、自分の信仰について申し述べる機会が与えられた。AA 1520.4

    「数日たった後、アグリッパ王とベルニケとが、フェストに敬意を表するため、カイザリヤにきた。ふたりは、そこに何日間も滞在していたので、フェストは、パウロのことを王に話して言った、『ここに、ペリクスが囚人として残していったひとりの男がいる。わたしがエルサレムに行った時、この男のことを、祭司長たちやユダヤ人の長老たちが、わたしに報告し、彼を罪に定めるようにと要求した』」。フェストは、その囚人パウロがカイザルに訴えたいと言い出したいきさつをかいつまんで話し、パウロがフェストの前で最近受けた裁判の事を告げた。そして、ユダヤ人たちがパウロを告発していたが、それはフェストから見ればなんら告発すべきものではなく、ただ、「彼ら自身の宗教に関し、また、死んでしまったのに生きているとパウロが主張しているイエスなる者に関する問題に過ぎない」と言った。AA 1520.5

    フェストがそう説明すると、アグリッパは興味がわいてきて、言った、「わたしも、その人の言い分を聞いてみたい」。そこで、彼の希望にそって、その翌日会うことに取りきめられた。「翌日、アグリッパとベルニケとは、大いに威儀をととのえて、千卒長たちや市の重立った人たちと共に、引見所にはいってきた。すると、フェストの命によって、パウロがそこに引き出された」。AA 1520.6

    来賓たちのために、フェストはこの機会を印象的に見せびらかしたいと思った。総督や彼が招いた人た ちの高価な衣服、兵士たちの剣、隊長たちのきらめくよろいが、この場の光景をきらびやかなものにした。AA 1520.7

    さて、パウロは、まだ手錠をかけられたまま、集まった人々の前に立った。これは何と著しい対照であろう。アグリッパとベルニケは権力と地位を持っていて、そのために世人の支持を受けていた。しかし彼らは神が尊ばれる品性に欠けていた。彼らは神の律法を犯し、心も生活も堕落していた。彼らの行動は天に忌みきらわれていた。AA 1521.1

    年老いた囚人パウロは、警備の兵士につながれていて、その姿には世人が尊敬を払うようなものは何もなかった。しかし、神のみ子への信仰のゆえに囚人として留置され、友も富も地位もないように見えるこの男に、全天は関心をよせていた。天使たちが彼につきそっていた。もしもこの光り輝く使者たちの中の1人の栄光が輝きわたったら、王者のはなやかさも誇りも色あせたであろう。王も廷臣たちも、キリストの墓にいたローマの番人たちのように、地に打ちのめされたであろう。AA 1521.2

    フェストはみずから居並ぶ人々にパウロを紹介して言った、「アグリッパ王、ならびにご臨席の諸君。ごらんになっているこの人物は、ユダヤ人たちがこぞって、エルサレムにおいても、また、この地においても、これ以上、生かしておくべきでないと叫んで、わたしに訴え出ている者である。しかし、彼は死に当ることは何もしていないと、わたしは見ているのだが、彼自身が皇帝に上訴すると言い出したので、彼をそちらへ送ることに決めた。ところが、彼について、主君に書きおくる確かなものが何もないので、わたしは、彼を諸君の前に、特に、アグリッパ王よ、あなたの前に引き出して、取調べをしたのち、上書すべき材料を得ようと思う。囚人を送るのに、その告訴の理由を示さないということは、不合理だと思えるからである」。AA 1521.3

    そこでアグリッパ王はパウロに弁明の自由を与えた。使徒はきらびやかな見せびらかしにも、高位高官の聴衆にもろうばいしなかった。彼は世俗の富や地位になんの価値もないことを知っていたからである。この世の見せびらかしや権力は、一瞬たりとも彼の勇気をくじいたり、自制心を失わせたりすることはできなかった。AA 1521.4

    「アグリッパ王よ、ユダヤ人たちから訴えられているすべての事に関して、きょう、あなたの前で弁明することになったのは、わたしのしあわせに思うところであります。あなたは、ユダヤ人のあらゆる慣例や問題を、よく知り抜いておられるかたですから、わたしの申すことを、寛大なお心で聞いていただきたいのです」とパウロは言った。AA 1521.5

    パウロは、以前のかたくなな不信からいかにしてナザレのイエスを世の救い主として信ずる信仰に至ったかの、改宗の物語をした。彼は天来の異象について述べた。その異象は、最初は彼を言いようのない恐怖で満たしたが、のちには、最も大きな慰め、神の栄光のあらわれとなったのである。その栄光のあらわれの中に、彼が軽蔑し、憎んでいたかたが王座にすわっておられた。彼はその時まで、その方の弟子たちを殺そうとしていたのである。その時からパウロは人を生まれ変わらせる恵みの力によって、新しい人、真実で熱烈なイエスの信者となったのである。AA 1521.6

    パウロは、アグリッパの前で、キリストのこの世のご生涯に関係したおもなでき事のあらましを明瞭に力強く述べた。彼は預言に示されたメシヤは、ナザレのイエスとなってすでに現れたことを証言した。彼は旧約聖書の中にメシヤは庶民の1人として現れるということが明示されていること、また、モーセと預言者たちによって述べられたあらゆる細かいことが、イエスのご生涯に成就されたことを説明した。失われた世を救うために、神の聖なるみ子は、恥をもいとわず十字架に耐え、死と黄泉にうち勝って、天にのぼられたのである。AA 1521.7

    キリストが死からよみがえられたということが、なぜ信じられないことに思えるのだろうとパウロは論じた。かつては彼もそう思ったことがあるが、しかし今は自分自身が見たり聞いたりしたことを、どうして信じないでいられようか。ダマスコの入口で彼は、十字架につけられてよみがえられたキリストを本当に見たのである。それはエルサレムの町を歩き、カルバリーで死 に、死のなわめを断ち切って、天へのぼられた方であった。パウロはケパやヤコブやヨハネやその他の弟子たちと同じように、イエスを見て、イエスと語り合った。そのみ声は、よみがえられた救い主の福音をのべ伝えよと彼にお命じになっていた。どうして従わないでいられようか。ダマスコで、エルサレムで、ユダヤ全国で、遠い地方で、彼は十字架につけられたイエスについてあかしし、あらゆる階級の人々に「悔い改めて神に立ち帰り、悔改めにふさわしいわざを行うようにと」、説いた。AA 1521.8

    「そのために、ユダヤ人は、わたしを宮で引き捕らえて殺そうとしたのです。しかし、わたしは今日に至るまで神の加護を受け、このように立って、小さい者にも大きい者にもあかしをなし、預言者たちやモーセが、今後起るべきだと語ったことを、そのまま述べてきました。すなわち、キリストが苦難を受けること、また、死人の中から最初によみがえって、この国民と異邦人とに、光を宣べ伝えるに至ることを、あかししたのです」とパウロは言った。AA 1522.1

    居並ぶ人々はみな、パウロのすばらしい体験談に魅せられて聞き入っていた。使徒は自分の好きな話題を強調していた。聞いている者たちは、彼の誠実さを疑うことができなかった。しかし、彼の説得力のある雄弁が最高潮に達している時、フェストにさえぎられた。フェストは大声で言った、「パウロよ、おまえは気が狂っている。博学が、おまえを狂わせている」。AA 1522.2

    パウロが答えた、「フェスト閣下よ、わたしは気が狂ってはいません。わたしは、まじめな真実の言葉を語っているだけです。王はこれらのことをよく知っておられるので、王に対しても、卒直に申し上げているのです。それは、片すみで行われたのではないのですから、1つとして、王が見のがされたことはないと信じます」。それから彼は、アグリッパに面と向かって話しかけた、「アグリッパ王よ、あなたは預言者を信じますか。信じておられると思います」。AA 1522.3

    アグリッパは深く感動して、その瞬間、自分の周囲の事情や地位の威厳を忘れた。彼は、ただ、聞いた真理だけを意識し、自分の前に立っている謙虚な囚人をただ、神の使者と見て、思わず知らず「おまえは少し説いただけで、わたしをクリスチャンにしようとしている」と答えた。AA 1522.4

    使徒は熱心に答えた、「説くことが少しであろうと、多くであろうと、わたしが神に祈るのは、ただあなただけでなく、きょう、わたしの言葉を聞いた人もみな、わたしのようになって下さることです。このような鎖は別ですが」と言いながら、鎖につながれた両手を上げた。AA 1522.5

    公平に評すれば、フェストやアグリッパやベルニケが、使徒を拘束している鎖をつけていてもよかったであろう。みんなは重罪を犯していた。これらの犯罪者たちは、その日、キリストのみ名による救いが与えられていることを聞いていた。少なくとも1人は、提供されているその恵みとゆるしをほとんど受け入れる気持ちになっていた。しかしアグリッパは提供された恵みをしりぞけ、はりつけにされたあがない主の十字架を拒んだのである。AA 1522.6

    王の好奇心は満たされた。彼は座席から上ちあがり、面会が終わったことを合図した。列席者たちは解散しながら、口々に言った、「あの人は、死や投獄に当るようなことをしてはいない」。AA 1522.7

    アグリッパはユダヤ人であったが、パリサイ人の偏屈な熱狂や偏見を持たなかった。彼はフェストに言った、「あの人は、カイザルに上訴していなかったら、ゆるされたであろうに」。しかし、この件は、更に高い法廷に委託されていたので、今は、フェストにもアグリッパにも司法権がなかった。AA 1522.8

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